空からの陽

2016年6月14日、中央省庁の幹部人事が閣議決定されました*1,2。「一億総活躍」や「女性活躍」を謳う安倍内閣。省庁の幹部人事における変革が少しずつ行なわれているようです。今回は、その要点についてみていきましょう。

2016年の省庁幹部人事

今回の省庁幹部人事でのポイントは、大きく2点。1点目は女性の登用。2点目は抜擢人事、つまり階級のスキップです。

女性の幹部登用数は昨年の28名からわずかに増加し、31名。幹部職に占める女性の割合も昨年の4.3%から4.7%に上昇しました。また総務省官房長には山田真貴子情報通信国際戦略局長を起用。大臣を補佐し各省庁全体を取りまとめるという、省庁の要の役割を果たす大臣官房。そのトップである官房長に女性が選ばれたのは、今回が初めてです*1,2

抜擢人事は入省年次に縛られない人員配置を行なうための施策。今回、経産省と金融庁で実施されました。階級のピラミッドが厳格な省庁での、階級をスキップする2階級特進と呼ばれる抜擢人事。従来の慣行を打破した施策です。

では、この2点にはどういう意味があるのでしょうか。私見ではありますが、読み取れることを考えてみました。

数値目標に向けて動いていくことが重要

まず、上記1点目の女性登用。女性の活躍を成長戦略の軸とする安部内閣は、日本の女性管理職の割合を2020年までに30%にするという目標を掲げています。今回の幹部への女性登用も、この目標を意識したものであると考えられます。

こういった女性登用のニュースが話題にのぼると、必ず「男性差別であり不適切」という意見が聞こえてきます。しかし果たして本当に不適切なのでしょうか。省庁の幹部女性が少ないままの状態に甘んじていることによるリスクのほうが、問題が大きいという見解もあります。

ひとつは国際社会からの信頼が失われていくリスク。多くの先進国では、政治や経済に関して日本よりはるかに男女平等が進んでいます(男女平等の実現レベルに関する国際比較は、こちら)。そんな国々からみて、女性活躍のための取り組みを疎かにする日本は、問題視されかねません。もうひとつのリスクは、国民の半分を占める女性の視点が抜け落ちた政策を続けてしまうこと。たとえば先日「保育園落ちた」のブログを発端に多くの母親たちが声を上げました*3。こういった声がきちんと受け止められていない現状のままでは、今後も女性が納得できないことが続いていくでしょう。国外からのみでなく国内からも不信が募るのは、避けるべき事態です。

また女性の積極登用に対しては「性別でなく能力で判断しろ」という声も聞かれます。では登用された女性の能力が低いかというと、そういうわけではないはずです。だからこそ、幹部女性の割合は増えているものの、その増加はわずかなのではないでしょうか。

男性幹部が圧倒的に多い中で女性の活躍を実現していくためには、まず目標値を設定し現状とのギャップを把握する必要があります。そのうえで意識的に変革していかなければなりません。今回の女性幹部の増加はたしかにわずかです。しかし、少しずつでも変わっていっていることには意味があるといえるでしょう。

男女問わず、成果で評価する

次に、2点目の抜擢人事。今回、審議官級の官僚に対して行なわれました。審議官級というと、企業では役員クラス。ごく限られた人にしか関係のないこと、とも感じられます。しかし、トップが変わることにより組織全体が変わっていきます。したがって今回の抜擢人事も、年功序列から脱しようとする動きとして重要であると思います。

私が以前勤めていた企業では、年功序列の制度がありました。勤続年数が昇格に不可欠な要素だったのです。すると、産休・育休で職場を離れた女性は、その分だけ昇格が遅くなります。年功序列は女性が活躍しづらい制度であると、肌で感じました。

年功序列から成果による評価に変わっていくことは、女性の活躍にとってプラスとなるでしょう。加えて男性にとっても勤続年数に縛られずに活躍でき、意味のあることといえます。

企業でも実施されていくことを期待したい

今回、省庁の幹部人事においてみられた2つの変化は、どちらも劇的なものではありません。わずかな変化にすぎないといえるでしょう。しかし、少しずつでも変えていこう、変えていかなければという姿勢が表れていたのではないでしょうか。

そして、これらの変化が必要なのは国の中央である省庁のみではありません。女性が活躍できないことは、企業にとってもリスクといえます。女性視点が抜け落ちていることで失っているビジネスチャンスもあるでしょうし、長期的に考えれば、そこに無頓着であることは社会的信頼に関わる問題ともなり得ます。これらのリスクを避けるためには、女性の活躍を推進していくことが必要です。また、年功序列でなく成果による評価を実施していくことで、女性にとっても男性にとっても、活躍できる可能性は広がっていくでしょう。ひいては、企業の生産性向上につながるのではないでしょうか。

まとめ

2016年の中央省庁の幹部人事で、女性の登用増加や入省年次に縛られない抜擢人事といった変化がみられました。これらはどちらも大きな変化ではありません。しかし現状を少しずつ変えていくという意味では、重要な変化であったのではないでしょうか。
とはいえ、このような変化が続いていくという保証はありません。今回みられた変化を現在の政権下のみでの一時的な改善としないために、今後も政府の動きには注意を払い続ける必要があるでしょう。

参考
*1 http://www.jiji.com/jc/article?k=2016061400731&g=pol 時事ドットコムニュース「官房長に女性初起用=交流人事も増加-中央省庁人事」(2016年6月15日)
*2 http://www.yomiuri.co.jp/politics/20160614-OYT1T50106.html YOMIURI ONLINE、省庁幹部、「抜てき人事も…官房長に初の女性起用」(2016年6月15日)
*3 http://bylines.news.yahoo.co.jp/sakaiosamu/20160314-00055411/ YAHOO! JAPANニュース、「 #保育園落ちたの私だ」無名の母親たちが起こした、空気に対する革命(2016年6月15日)


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