社会的に地位の高い役職や職業に女性が就くと、女性であることが強調されます。女社長、女弁護士、女医、女性官僚、女性管理職……。男性であれば、これらの役職に「男」という冠詞がつくことはありません。これは何を意味しているのでしょうか。

「男」でないと働きづらい

「女」と付されるこれらの職業の男女比を見てみると、未だに女性の割合が低いことがわかります。たとえば、弁護士の女性比率は16%(平成23年)*1、医師では17%(平成22年)*2です。これらの職業においては、女性はマイノリティであり、だからこそ「女」と強調されます。すると、そのように扱われる女性は、自分が女性であること、そして女性である自分がその立場にいることへの居心地の悪さのようなものを感じざるを得ません。地位の高い女性が「男として働く」という表現がされるように、「男」でないと働きづらいのです。

一方で、メリットとも捉えられる側面もあります。それは、女性というだけで目立つということです。私が学生の頃、生命科学分野の研究者として大学に残った女性に話を聞いたことがあります。大学の研究者も女性比率の低い職業です。彼女は、たとえば学会で発表するときは、女性であるというだけで注目されやすく、発表を聞いてもらうきっかけになることもある、と言っていました。これをうまく利用できれば、たしかに新たなチャンスを得やすくなるでしょう。しかしながら、目立つことが本当にメリットといえるかは、疑問が残ります。

できる女性は嫌われる

2003年に行なわれたハイディ・ハワード実験をご存じでしょうか。仕事における成功物語での主人公への評価を、主人公がハイディ(女性)の場合とハワード(男性)の場合で調べた実験です。その結果、能力に関しての評価は二人の主人公で同等であったものの、人柄の印象については、ハワードはプラスに、ハイディはマイナスに評価されました。この傾向は、女性が評価を行なった場合も同様でした。つまり、仕事のできる女性は、男性からも女性からもマイナスの印象を持たれてしまうのです。仕事で成功し、高い評価を得ている女性は、同様の評価を得ている男性と比べて目立つと考えられますが、結果として嫌われてしまうのでは、仕事はしづらいはずです。目立つために嫌われる、ということも否定できません。

できる女性が当たり前、に

この現状を解決するためには、女性も男性も活躍して評価されるのが当たり前にならなければなりません。「できる人=できる男」という無意識のうちに根付いている概念が崩壊し、できる女性が当たり前になる必要があるのです。「女○○」という言葉は、女性がマイノリティでなくなれば不要になります。そして女性が不必要に目立つこともなくなります。

このためにまずは、高い地位の女性の数が増えることは必須ではないでしょうか。現状では、高い地位の女性が少ないために、本当は有能な女性も、その能力を発揮しづらいことが多いのです。女性のロールモデルが少なく、男性が大部分の権力を握っている中で、女性が能力を発揮して活躍していくことは簡単ではありません。そして、高い地位の女性の数が増えるためには、女性への適切な教育や女性の積極的な登用が必須です。

教育は、進路選択の際に女性が自分の能力にあった選択ができるようにするために非常に重要です。特に社会的地位が高いといわれる医師や弁護士といった職業は、大学でその分野を学ぶ必要があるため、進学先を選ぶまでの教育は将来を左右します。たとえば、医師になりたいと思っている女子生徒。しかし、「女性は理系科目が苦手だ」という思い込みのために、女子生徒への理系科目の教育が軽視されることがあります。また、「女の子なのに理系?」という周囲からの声。私の友人でも、実際にこのように聞かれたことが何度もある、という人もいます。こうした教育の偏りや周囲からの圧力が、「医師になりたい」という希望を打ち砕いてしまったり、本人の能力を発揮させないように働くことも少なくないのではないでしょうか。

また、男性ばかりが権力を持った社会で、何も働きかけをせずに高い地位に就く女性の数を十分数まで増やすことは、ほぼ不可能でしょう。したがって、女性を積極的に登用するという、企業や社会全体の意志も必要になってきます。これらが実現され、女性が当たり前に活躍するようになれば、できる女性が嫌われるということも次第になくなっていくと期待されます。しかし、それまでには非常に長い時間が掛かります。そのため、現段階ではまず、できる女性は嫌われやすいということを、男女ともに理解しておく必要があります。そして、「女性だから」という見方をしていないかを少し意識し、不必要にそのような考え方をしないように気を配ることが大切です。

まとめ

社会的地位の高い役職・職業は、未だに女性の割合が低く、また、有能な女性は男女どちらからもマイナスの印象を持たれやすいのが現実です。まずは女性がマイノリティである状況を脱すること、そしてできる女性を無意識に嫌ってしまいがちな事実を、男女ともに認識しておくことが大切です。

参考
*1 裁判官,検察官, 弁護士の女性比率(全国)http://www.sendai-l.jp/chousa/pdf_file/5/5-1/5_1_1.pdf (2016年4月12日)
*2 女性医師の年次推移http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000069214.pdf (2016年4月12日)


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