赤ちゃんの手

前回の記事は、日本の出生率回復にスポットを当てた記事をお届けしました。その内容にも関連した特集が、5月30日の日経新聞に掲載されていました*1電子版はこちら)。そこで示されたのは、「妻は家庭を守るべき」という意識の根強さ。相変わらずの固定観念であることに思わずため息をついてしまいそうです。しかし、そうではない男性も、育児に積極的に参加するのは難しいというのが現状ではないでしょうか。

分業意識以上に顕著な男性の育休取得率の低さ

先述の日経新聞の調査*1は、出生率およびジェンダー・ギャップ指数(ジェンダーギャップ指数についての記事はこちら)の低さが顕著である日本と韓国の男女を対象に行なわれ、両国とも「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考えに賛成する人が約4割にのぼることを示しました。また「女性は仕事より子育てを優先すべきだ」とする人も同じく約4割。この現状では、働きたい女性は結婚や出産に不安を感じてしまうのも無理はありません。

一方で、育児に参加したいと考える男性は増加しているようです。育休を取得したい男性の割合は、2012年時点で約6割*2。半数以上の男性が、育休の取得を望んでいるのです。しかしながら、実際の育休取得率は、2.30 %に過ぎません*3(2014年)。なぜ、育休取得希望者のほとんどは、育休を取っていないのでしょうか。

この原因として、2つのことが考えられます。ひとつ目は、「パタハラ」を含む、職場の理解のなさ。もうひとつが、お金の心配です。

「パタハラ」って?

たとえば、育休を取ろうと考えた男性社員が上司に「育休を取得しようと思いまして……」と相談した際に、上司から「どうして育休を取る必要があるんだ。仕事に穴をあけていいと思っているのか!」といわれる。もしくは、「子どもが熱を出したので早退します」という男性社員が、「子どもの世話は母親の仕事だろ」といわれる。

これらはパタニティ・ハラスメント、通称「パタハラ」です*4。パタニティとは、父性のこと。男性が育児に参加する権利や機会を奪うパタハラは、企業の体質として問題視されています。パタハラは、企業イメージを低下させる恐れもあり、企業にとってのリスクともいえるでしょう。

一方、男性が育児に参加しやすい環境をつくることは、企業にとってプラスになると考えられます。たとえば、男性の育休取得も要件に含めた、子育てサポート企業の認定の証である「くるみん」マークは、企業イメージをアップさせるという声が上がっています*5。「くるみん」認定のためには、行動計画の提出・実施・報告が必要となり*6、簡単に申請できるものではありません。しかし、男女ともに子育てをしやすい職場環境をつくっていくことは、企業にとってのメリットとなることは言うまでもありません。

育休中のお金のこと

次に育休を取りたいと思う男性本人が育休取得をためらう理由として考えられるのが、お金のこと。育休中は支給制度のある企業でない限り、給与はなくなります。それを心配し、育休取得に踏み切れない人も多いのではないでしょうか。でも実はそんなことはありません。雇用保険に入っていれば、育児休業給付金が支給されるのです。

育児休業給付金が受け取れるのは、子どもが産まれてから1年間。育休取得開始から6か月間は休業前の給与の67%、その後は50%が支給されます。そして休業中となるため所得税や雇用保険、社会保険料の控除はありません。したがって、はじめの6か月間に受け取れる金額を手取りで考えると、休業前の約80%となります。さらに妻と夫で6か月ずつ育休をとることもでき、その場合は、1年間ずっと休業前の給与の67%を受け取り続けることができます(パパママ育休プラス制度)*7


図1 育児休業給付金の支給

したがって育児休業給付金は、夫婦が交代で育休を取得したときのほうが高くなる可能性があります。例えば、夫婦ともに一か月の給与が額面で25万円として考えてみましょう。2か月の産後休業の後、子どもが1歳になるまで育休を取るとします。妻のみが育休を取った場合と、妻が6か月、その後、夫が4か月取った場合を比較すると後者のほうが17万円も多く給付を受けることができます。


図2 妻のみと、夫婦が交代で育休を取る場合の給付金額の違い

以上のように育休中は最大で休業前の給与の67%(手取りでは約80%)を育児休業給付金として受け取ることができ、夫婦交代で育休を取ったほうが受け取り額は高くなる可能性があります。男性の育休取得を推進したい企業は施策のひとつとして、この事実を周知してみるとよいのではないでしょうか。

まとめ

育休取得を希望する男性は増えてきているものの、男性の育休取得率はわずか2.3%。そこにはまず、男性の育児参加をよしとしない企業の体質があるのではないでしょうか。こういった体質は、企業のイメージを低下させるリスクがあり、改善が望まれます。また、育休取得する男性本人としては、お金の心配もあるかもしれません。しかし、育休中は育児休業給付金を受け取ることができ、その額は夫婦交代で育休を取得したほうが、妻だけが育休を取得するよりも高くなる可能性があります。この事実を周知することから、男性の育休取得率改善に取り組んでみてもよいかもしれません。

参考
*1 日本経済新聞、6面(2016年5月30日)
*2 http://www.hyogo-wlb.jp/uploaded_files/pdf_1408704225.pdf ひょうご仕事と生活センター、これからの「働き方」を考える仕事と生活のバランス、vol.12、2012年(2015年6月1日)
*3 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-26r-07.pdf 厚生労働省、「平成26年度雇用均等基本調査」の結果概要(2015年6月1日)
*4 http://www1.tcue.ac.jp/home1/k-gakkai/waorkolife.pdf 北村剛ら、高崎経済大学 学生論文「ワーク・ライフ・バランスと企業の役割 マタハラ・パタハラと長時間労働の改善」(2015年6月1日)
*5 http://osaka-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/osaka-roudoukyoku/H26/teirei/2609-TP1.pdf 大阪労働局、次世代認定マーク「くるみん」の取得企業増加中!!(2015年6月1日)
*6 http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/kurumin_20141202.pdf 厚生労働省、次世代育成支援対策推進法関係、くるみん認定 プラチナくるみん認定の認定基準・認定マークが決定しました!(2015年6月1日)
*7 http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h26_6.pdf 厚生労働省、育児・介護休業法、「育児給付金が引き上げられました!!」リーフレット(2015年6月1日)


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