3人きょうだい

働く女性にとっても大きな関心事である出産や子育て。そんな出産に関連して、先日ニュースが発表されました。2015年、一人の女性が生涯に産む子どもの数の推計である合計特殊出生率が、2年ぶりに上昇したというもの。これは喜ばしいニュースです。しかし、手放しに喜べる状況なのでしょうか。

2015年の出生数と出生率

厚生労働省が発表した人口動態統計*1によると、2015年の出生数は100万6千人。2014年の100万4千人から約2000人増加しました。出生数の増加は5年ぶり*2。30歳以上の世代で、前年より出生数が増加したことが寄与しています。

また、一人の女性が生涯に産む子どもの数の推計を示す合計特殊出生率は1.46で、2年ぶりに上昇しました*1。さらに、この数字は、1.50を示した1994年以降で最も高い水準*2。安部政府が目標として掲げる「希望出生率=1.8」*3にはまだ遠いものの、出生率改善は日本にとって良いニュースといえるでしょう。この改善に対して、厚生労働省は「経済状況が良かったことが一因と考えられる」と説明しています。

子どもを産むのをためらうネックとなるのは、お金のことと保育制度のこと

出産や子育てにお金がかかることは、詳細までは把握していなくとも、みなさん認識しているかと思います。経済状況が悪ければ、子どもを育てることが不安になるのは当然といえるでしょう。

実際、「お金がかかりすぎるから、本当は欲しいと思っている人数の子どもを産まない」という夫婦は多くいます*4。特に所得が少ないと考えられる若い世代ほど、お金のことを心配しているようです*4。加えて、保育制度が不十分というのも事実です。2016年2月に話題となった「保育園落ちた日本死ね」のブログや、その後の女性たちの反応*5からもわかるように、子どもを預けたくても預けられない状況が続いています。働きたい女性にとって、これは大きな問題となります。

以上のように、経済的な支援と子どもを預けられる保育制度が不十分であることから、未だに日本は子どもを産みにくい環境にあるといえるのではないでしょうか。2015年の出生率の回復は、好況による一過的なものに過ぎないのかもしれません。

子育てを支援する手当や税制の拡充を

それでは、日本の子育てに対する経済的な支援についてみてみましょう。日本でも、児童手当の支給や所得税制における扶養控除といった制度があります。しかし、他の先進国と比較すると十分な支援ができているとはいえません。最も子育てへの経済的支援が手厚いフランスと比較すると、以下のような給付金額の差があります*6

第1子の生まれた年を0年として、その2年後に第2子が生まれるケースで考えます。このケースで各年に受け取ることができる給付金の金額は、図1の通りです。最も給付金額の差が大きい2年目には約59万円もの違いがあります。


図1 日本とフランスの子育て支援給付額の比較
(第1子誕生の2年後に第2子が誕生するケース)*6

このように、日本と比較して子育てに対する経済的支援の整ったフランス。1990年代半ばまでは、合計特殊出生率は下がり続け、1994年には1.65を示していましたが、2006年には2.00を超え、その後も2前後を維持しています*7。この回復には、経済的な支援制度が寄与していると考えられます。しかし、経済的な支援のみで十分といえるのか、疑問が残ります。なぜなら、フランスと同様に経済的支援の手厚いドイツが、日本よりもさらに合計特殊出生率が低い(2013年の段階で1.40*8)からです。

保育制度の拡充も必要

では、フランスとドイツの違いは何なのでしょうか。それは、保育制度の違いです*9。フランスでは1990年代以降、保育制度の充実に注力してきました。ベビーシッターの他、「保育ママ」という保育者が自宅で数人の子どもの保育を行なう制度があり、保育所以外にも保育制度が充実しています。一方、ドイツでは保育所の受け入れ人数も少なく、保育制度が充実しているとは言えません。子どもの面倒は母親がみる、という傾向が強く残っているのです。

このことから、子どもを安心して産める環境としては、経済的な支援を整えるのみでは不十分であり、保育制度の拡充も不可欠といえます。

まとめ

2015年、日本の合計特殊出生率は1.46で、2年ぶりに上昇しました。しかし、これは経済が好況であったために起きた変化に過ぎず、安心して子どもが産める環境が整っているとはいえない状況です。子どもを産むのをためらう理由として最も重要なのは、お金のことです。出産や子育てに対する手当や税金の控除といった、子育てを経済的に手厚く支援する仕組みづくりが急務です。加えて、保育制度の拡充も進めていけば、子どもを産むことが促進されていくでしょう。

参考
*1 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai15/dl/kekka.pdf 厚生労働省、2015年 人口動態統計 (2016年5月24日)
*2 http://ecodb.net/country/JP/fertility.html 世界経済のネタ帳、日本の合計特殊出生率の推移 (2016年5月24日)
*3 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/goudou/dai5/sankou1.pdf ストップ少子化・地方元気戦略(要約版) (2016年5月24日)
*4 http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2013/25webhonpen/html/b1_s1-1.html 内閣府、平成25年版 少子化社会対策白書 第1部 少子化対策の現状と課題 第1 章 少子化の現状 第1節 近年の出生率の推移 (2016年5月24日)
*5 http://bylines.news.yahoo.co.jp/sakaiosamu/20160314-00055411/ YAHOO! JAPANニュース、「#保育園落ちたの私だ」無名の母親たちが起こした、空気に対する革命(2016年5月30日)
*6 http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2005/17pdfhonpen/pdf/h1040200.pdf 内閣府、平成17年版 少子化社会対策白書 第1部 少子化対策の現状と課題 第4章 海外の少子化対策 第2節 欧米諸国の少子化対策 (2016年5月24日)
*7 http://ecodb.net/country/FR/fertility.html 世界経済のネタ帳、フランスの合計特殊出生率の推移 (2016年5月24日)
*8 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/hikaku2014.pdf 諸外国の合計特殊出生率の推移 (2016年5月24日)
*9 http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h26pdf/201413102.pdf フランスにおける子育て支援(2016年5月24日)


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