トマトソースをタッパーに入れていたら、タッパーが汚れて洗っても全然落ちない!なんてこと、ありませんか?そんな時は、外に干してみましょう!今回は簡易的な検証実験付きでお送りします。

リコピンはなぜ赤い?

トマトでタッパーが汚れてしまう原因は、トマトの赤い色素「リコピン」。リコピンは水にはほとんど溶けない成分です。一方、油にはよく馴染みます。だから油を加えて調理したトマトソースは、リコピンが油によく溶けた状態。それをタッパーに入れておくと、油とリコピンがタッパーに染み付いて汚れてしまうのです。そして水に溶けないリコピンは、水で洗っても落とすことができません。

リコピンの構造

さて、このリコピンですが、どんな構造をしているのでしょうか?その答えがこちら↓

lycopene
(wikipedia「リコペン」より)

え、棒だけ?!これじゃ全くわからない!!という方が多いと思うので、簡単に説明します。

上の図は、リコピンを構成する主な成分、炭素原子(元素記号 C)が省略して描かれています。炭素原子を省略せずにリコピンの分子構造をかくと、このようになります。
lycopene2
少しわかりやすくなったでしょうか。

では、この炭素同士をつないでいる棒は一体何?それは炭素原子同士の結合です。2つの炭素が互いに手を出し合うことで、原子同士がつながり、ひとつの棒をかたち作っています。
リコピン分子の中には、1本線の結合と2本線の結合がありますね。1本線は単結合と呼ばれる結合。炭素原子が1本ずつ手を出し合ってつながっている部分です。2本線は、2つの炭素が2本ずつ手を出し合っているところ。この結合は二重結合と呼ばれます。

リコピンの構造をよく見てみると、単結合の1本線と二重結合の2本線が交互にずらっと並んでいますね。単結合と二重結合が交互に並ぶ構造は「共役系」と呼ばれます。リコピンの特徴は、この共役系がとても大きいこと。そしてこの大きな共役系、実はリコピンが赤い理由なのです。lycopene_共役系

色と、光の吸収

モノの色は、光の吸収と関係しています。
子どもの頃、学校でプリズムを使って光を見たことはありますか?白い光は、プリズムを通すことで虹色に分離することができます。このことからもわかるように、光(可視光と呼ばれるものです)は色を持っています。
光を吸収しないモノは、無色です。たとえば、水とか空気を構成している酸素や二酸化炭素などは、光を吸収しないため、無色です。一方、光を吸収するモノは色がついて見えます。そしてリコピン分子が持つ大きな共役系は、光を吸収する特性を持ちます。その結果、リコピンは赤い色に見えるのです。

※なぜ大きな共役系は光は吸収するのか?については、より専門的な話になるので、詳しく知りたい方は記事の下にリンクを貼ったページを読んでみてください。

赤い色をなくすには

光を吸収するのは、「大きな」共役系と説明しました。逆に言うと、「小さな」共役系は光を吸収しません。したがって色は無色。
つまり、リコピンの共役系を切断してしまえば、もはやリコピンは赤くなくなるのです(分子構造が変わったらもはやリコピンではありませんが)。タッパーのトマト汚れも解決ですね。
ここで登場するのが、紫外線(UV: Ultraviolet)です!

紫外線といえば体に害のあるもの、というイメージは多くの人がお持ちでしょう。まさにそのイメージどおり。紫外線は細胞を攻撃するチカラがとても強く、皮膚がんなどの原因にもなるもの。そして、その攻撃対象は人の体に限ったものではありません。リコピンも紫外線に当たると、攻撃されるのです。そして、リコピンは壊れてしまいます。たとばこんな具合に……
degradation

これはもう「大きな」共役を持たない分子。したがって光を吸収できないため、無色になるのです。

実際に紫外線を当ててみよう

リコピンに紫外線を当てると、リコピンが壊されて無色になる、ということはおわかりいただけたでしょうか?理屈はわかったけど、ほんとにそんなに上手くいくもの?と疑問視している方もいらっしゃるかもしれません。そこで、実際にやってみた結果をお示ししましょう!

私のお弁当用タッパーの蓋にリコピンがつきました。洗剤で洗ってもまったく落ちません。さあ、実験開始です。

2017年2月9日(雨)
8:00頃、汚れたタッパーの蓋(下図左)を洗濯バサミではさみ、ベランダへ。日が暮れるまでベランダで干した(下図真ん中)。この日は1日中雨だった。
2017年2月10日(晴れ)
8:00頃、再びベランダへ。日が暮れた後、回収(下図右)。
result

写真の通り、見事に汚れがなくなりました!

私が印象的だと感じたのは、雨の日でもけっこうな効果があったこと。今回はそんなにひどい汚れではなかったので、付着していたリコピンの量も多くはなかったと思います。したがって効果があったと言っても、大量のリコピンが壊されたというわけではありません。しかし、雨の日でも多少のリコピンが壊されるくらいの紫外線が降り注いでいるということを確認できる機会になりました。

まとめ

リコピンは大きな共役系を持つため、光(可視光)を吸収し、赤い色を呈します。紫外線によってリコピンが壊されると、光が吸収されなくなり、無色になります。今回実験してみて、タッパーのトマト汚れ程度であれば1~2日間、外に置いて紫外線を当てることできれいになることがわかりました。

参考. 共役系と光の吸収について
1. キリヤ化学 HOMO、LUMOとはなんですか?http://www.kiriya-chem.co.jp/q&a/q61.html


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