「夢は叶うよ」とか「一歩前に踏み出そう」とか歌っている曲、たくさんありますよね。私はそんな曲に力をもらうこともありますが、ちょっと違った視点から「がんばってみようかな」と思わせてくれる曲も好きなので、今回はそんな曲について。

「絶対ないとは言い切れない」/忘れらんねえよ

忘れらんねえよというバンドがいます。CMソングなども歌っており、曲を聴いてみると耳にしたことがあった!という人が多いかもしれません。国内最大級の夏フェスであるロック・イン・ジャパン・フェスティバル2017にも出演している実力のバンドです。

「マイナビバイトの歌」

「いいひとどまり」(予防医学のアンファーCMソング)

そんな忘れらんねえよの曲の中で、私が好きな曲のひとつが「絶対ないとは言い切れない」。スローテンポなこの曲は、いわゆる応援ソングとは全く異なる印象ですが、じーんと心に染みて、「ああ、がんばってみよう」と思える曲なのです。それでは、その歌詞を抜粋して見てみましょう。

【1番】
深呼吸をしてごらん
いま吸った君のその空気は
二年ほど前に堀北真希が吐いた
息かもしれない

【2番】
水道水を飲んでごらん
いま飲んだ君のその水分は
二年ほど前にベッキーが流した
涙かもしれない

【ラスト】
そのギターを弾いてごらん
いま弾いた君のそのフレーズは
いつか世界を変えるロックンロールの歌に
なるかもしれない

絶対ないとは言い切れない。だからやってみたらどう?
そんな曲なのです。

努力できない奇跡と努力できる奇跡

1番、2番で”こんな奇跡的なことも絶対ないとは言い切れないだろ”と歌い、ラストで”だからやってみたら?”と歌う。”君の夢も叶うかもしれないんじゃない?”と。ですが、この歌詞をよく考えてみると「絶対ないとは言い切れない」理由はすべて同じではないことに気づきます。

確率論的にゼロではない奇跡

1番で歌っているのは、確率論的にゼロではないという例です。堀北真希さんのような憧れの的である人が吐いた息。その空気が循環し、巡り巡って自分が吸っているかもしれない。奇跡のようだけれど、たまたまそうなる確率はゼロではありません。2番の歌詞も同様で、ベッキーさんの流した涙が蒸発して雲になり、雨となって降り注ぎ水道水となってたまたま自分が口にしているかもしれません。確かめようもないけれど、そんな奇跡のようなことが実際に起こっているかもしれません。ですが、これらの奇跡は起こそうと思っても起こせない奇跡。どんなに「堀北真希の吐いた空気、やって来い!」と思ってみても、実現させるための役には立たず、それが起きる確率は変わらないのです。

叶えるために自分で努力できる奇跡

一方、ラストの歌詞で歌っているのは、それを叶えるために自分で努力することができる奇跡です。自分でつくった曲は、何もしなければだれにも知られずに終わってしまうけれど、聴いてもらうためにできることがたくさんあります。YouTubeにアップしてみる。SNSで拡散してみる。ライブハウスで歌ってみる。そんな行動を起こせば、奇跡が実現する確率を上げることができます。そこにしっかりした戦略があれば、その確率はさらに上がるでしょう。

このように、1番、2番とラストでは「絶対ないとは言い切れない」と歌われていることの本質が異なっていることがわかります。1番、2番の歌詞を根拠に、ラストで”君の夢も叶うかもしれないんじゃない?”と伝えるのは、論理的には少し違和感を感じます。ですが、この曲を聴くと不思議と「ああ、がんばってみよう」と思えるんですよね。

納得感のあるものから拡張して伝える

きっとはじめから”君の夢も叶うかもしれない”と歌われていたら、曲の印象はまったく違うものだったと思います。自分にはそんな才能ないよ、とか、そんなの無理でしょ、とか思っちゃいますよね。でも1番や2番で歌っている「絶対ないとは言い切れない」ことは、本当に自分の身に起こっているかもしれないこと。だからこそ、「絶対ないとは言い切れない」という言葉に納得感があり、その後のラストの歌詞もすんなり入ってくるのではないかな、と思います。この歌詞の展開が、作詞されている柴田隆浩さんの上手さだなと思いました。

育児放棄しない

ラストの歌詞は、叶えるために自分で努力することができる奇跡を歌っていると先ほど書きました。その努力ってとても重要なものだよな、という話を最後に。作品を多くの人に届けるために努力するというのは、キングコングの西野亮廣さんの言葉を借りると「育児放棄しない」ということです。西野さんの著書「革命のファンファーレ 現代のお金と広告」には、このように書かれています。

お客さんの手に届くまでの導線作りも、作品制作の一つだ。導線作りができていない作品は「未完成品」という認識を持った方がいい。
育児放棄しない
(革命のファンファーレ 現代のお金と広告, 幻冬舎, 76ページ)

西野さんご自身の導線作りの周到さは言わずもがなと思いますし、詳しく知りたい方は「革命のファンファーレ 現代のお金と広告」を読むととても勉強になると思います。では、忘れらんねえよの導線作りは?というと、こちらもまたすごいことをやっていたりします。一番インパクトが大きいのは、楽曲「寝てらんねえよ」を収録したアルバム「犬にしてくれ」のリリース発表に合わせて行なわれた、ドミノ倒し日本記録更新でしょう。柴田隆浩さん(Vo, G)がドミノ倒し日本記録更新に挑戦し、その様子が8日間に渡りニコニコ生放送で中継され、見事6万個のドミノを倒し日本記録を更新したのです。そしてその記録更新直後にアルバム「犬にしてくれ」のリリース発表を行ないました。挑戦の様子をニコ生で見かけていたら、「犬にしてくれ」を買いたくなっちゃいますよね。さらに、ドミノで描いた絵柄は「寝てらんねえよ」の歌詞を表現しており、ドミノへの挑戦の様子とともに「寝てらんねえよ」のMVとなっています。このMV、感動的です。

「寝てらんねえよ」

「犬にしてくれ」アルバム全曲トレーラー(「絶対ないとは言い切れない」も収録)

このように作品を届けるための努力を惜しまない柴田さんが歌う「絶対ないとは言い切れない」は、とてもおすすめです。ぜひ聴いてみてください!

そして、私が忘れらんねえよが大好きで書いたこの文章が忘れらんねえよの柴田さんに届くことも、「絶対ないとは言い切れない」。それは、私がこれを書き終えた後、#忘れらんねえよ をつけてツイッターでつぶやくから。届くといいな。


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