脂質は奥深い!トリアシルグリセロールとリン脂質ってなに?

このイヤリングについて、今回は解説します。

トリグリイヤリング

以前アップした、イヤリングできたよ!の記事はこちら

トリアシルグリセロールってなに?

何も知らない人がこのイヤリングを見たら、まさか分子構造を表しているなんて思わないだろうな、と思っているのですが、いかがでしょうか?理系の知識は全然ないという友達に見せてもなかなか好評でした。ですがこれ、「トリアシルグリセロール」(トリグリセリドともいいます)という分子の構造をけっこう忠実に表現しています。

では、そのトリアシルグリセロールって何なのでしょうか?その答えは、健康診断の血液検査でもみている「中性脂肪」。さらには、体の中に蓄えられている、いわゆる「脂肪」でもあります。こう聞くと嫌われ者のイメージが強いと思いますが、脂肪はいざというときのエネルギー源。ほどよく蓄えておくのがベストです。

この「脂肪」と似たような言葉に「脂質」がありますね。「脂質」というのは、体の中にある水に溶けないものの総称。水に溶ける性質のことを「親水性」といい、反対に水に溶けない性質を「疎水性」といいます。そんな疎水性の「脂質」の中でも、トリアシルグリセロールのことを「脂肪」や「中性脂肪」と呼ぶのです。

トリグリの分類

そしてトリアシルグリセロールの分子構造はこちら。

トリアシルグリセロールの構造

左は炭素原子(元素記号:C)を省略して書いたもの、右はCを省略せずに書いたもので、全く同じ構造を表しています。特に右側の構造式からは、イヤリングでの再現具合がよく分かりますよね。

この構造をさらに詳しく説明すると、グリセロールに3つの脂肪酸が結合した構造になっています。トリアシルグリセロールの「トリ(tri-)」は「3つ」という意味、「アシル」は結合した脂肪酸部分の呼称なので、名前の通りの構造なのです。

トリアシルグリセロールの構造2

↓分解すると……

グリセロールと脂肪酸

多様な脂肪酸

グリセロールには種類がありませんが、実は脂肪酸にはたくさんの種類があります。魚に多く含まれ体に良い成分として有名なEPAやDHAも、脂肪酸です。どの脂肪酸も炭素が一列に並び、端が「COOH」という構造(カルボキシル基と呼ばれます)をしていますが、種類ごとに炭素の数(=長さ)や炭素同士の結合の仕方(単結合か二重結合か)が異なっています。脂肪酸はいずれも単体で疎水性の性質を示しますが、炭素数や二重結合の数によって疎水性の強さ、つまりいかに水に溶けづらいかの度合いなどが異なります。イヤリングのトリアシルグリセロールでは、脂肪酸は3つともパルミチン酸という、16個の炭素がすべて単結合で繋がった構造です。ちなみに、EPAは炭素数が20、二重結合が5つある脂肪酸です。

パルミチン酸とEPA

エネルギーが足りなくなると脂肪酸の出番

体がエネルギー不足になると、脂肪組織に溜め込まれたトリアシルグリセロールから脂肪酸が切り出されてエネルギー源として使われます。なぜトリグリセリドの形で蓄えているかというと、炭素原子が並んだ脂肪酸の構造がエネルギーを貯蓄する分子として優れており、それを効率よく蓄えておける形だから。結合箇所を3つ持ったグリセロールに、脂肪酸を3つと最大限まで結合したトリアシルグリセロールは、脂肪酸をひとつにまとめておけるわけです。

細胞を形作るのも、実は脂質

一方で、グリセロールに脂肪酸が2つ結合した脂質も、体の中に非常に豊富にあります。

理科(生物)の教科書で、細胞膜がこのように模式図で示されているのをみたことがありませんか?

細胞膜のリン脂質

この頭に足が2本生えた構造は、「リン脂質」という脂質。細胞を形づくる膜の主成分は、実は脂質なのです。そしてこのリン脂質こそ、グリセロールに脂肪酸が2つ結合した構造です。グリセロールのもうひとつの結合部分には、リン酸基が結合しています。リン酸基があるから「リン脂質」というんですね。リン酸基は水に馴染む親水性の構造。さらにリン酸基の先にも別の親水基(親水性の構造)が結合しています。つまりリン酸基よりも先の、模式図で丸い頭で示された部分は、親水性です。一方、脂肪酸は疎水性。リン脂質はひとつの脂質分子の中で、親水性の部分と疎水性の部分の両方があるわけです。

リン脂質の構造

そしてリン脂質とひとことで言っても、1種類ではありません。リン脂質の頭の部分はリン酸基と別の「親水基」が結合していると述べましたが、この親水基にバリエーションがあるのです。親水基がコリンの場合は「ホスファチジルコリン(PC)」、イノシトールの場合には「ホスファチジルイノシトール(PI)」というように呼び分けられます。さらには、足の部分、つまり脂肪酸もたくさん種類があります。

少し複雑になってきましたね。ポイントとして知ってほしかったのは、細胞膜の主成分が脂質であるということ。またその脂質はいくつか種類があるけれど、どれもひとつの分子の中に親水性の部分と疎水性の部分がある、ということです。同じグリセロールと脂肪酸から構成される脂質でも、完全に疎水性のトリアシルグリセロールとは異なる面白い特徴があるのです。

次回は、細胞膜のリン脂質の方について解説したいと思います。お楽しみに!

まとめ

トリアシルグリセロールは、グリセロールに3つの脂肪酸が結合した構造。エネルギーを効率よく貯めておける分子です。一方リン脂質は、同じくグリセロールと脂肪酸から構成される脂質ですが、脂肪酸以外に親水基も結合しており、ひとつの分子の中で親水性の部分と疎水性の部分を持つ分子。このリン脂質は、細胞を形作る膜の主成分として重要な分子です。